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自動車大国日本では、新車も中古車も市場の競争は激しく、傍から見ればレッドオーシャン。そんな環境で2000年、五十嵐真一という男が大学を中退して会社を立ち上げた。

その名は、トップランク。中古車販売をコアに買取、修理、保険、海外事業、人材事業等を通じて、トータルカーライフサポートを提供する会社だ。ミッションには、本質を追究し、唯一無二の存在になる~「The Pride for Quality」を掲げる。

どうすれば唯一無二になれるのか。

ビジネスの中心に据えるのは「人」。人と人がつながり、信頼関係を築き、その輪を太くしながら広げていく。ユニークなのは視点の置き方だ。電動化の時代に、化石燃料で動く内燃エンジンのクルマの価値向上を見据え、海外マーケットへの積極展開も仕掛ける。

従来の中古車販売業の習慣や常識にとらわれない発想、行動はどこから生まれるのか。五十嵐の目に将来はどう映っているのだろうか。


大切な人たちにサービスを届けたい。両親の反対を押し切り、大学中退・起業


「サーフィンが好きな普通の高校生でした。18歳で運転免許を取ったのも、海へ行くためでした」と五十嵐は言う。

友だちも似たようなものだったが、五十嵐が違ったのは、人よりカッコよくありたい、という思いが強かったこと。五十嵐にとってクルマは自分を表現するアイテム。五十嵐はほどなく自らクルマの改造を行なうようになる。

中古車販売店でアルバイトをはじめたのは、「設備や道具が揃っているから」。自分のクルマをいじるのが目的だったが、仲間や後輩たちに頼まれ、クルマまわりの世話をするようになる。カスタムを手伝いながら、やがて五十嵐の中に1つの思いが芽生えた。

「喜んでもらえるのがうれしかったし、収入も得られる。私の信条は『人の役に立つこと』ですが、そのアルバイトではじめて意識したと思います」(五十嵐)

仕事は面白かったが不満もあった。当時の中古車業界には、走行距離改ざんなどの不正が横行。友人がそうしたクルマを摑まされる様子を見て、憤りを感じた。

五十嵐は、「信頼してくれる大切な人たちに、自分の手でサービスを届けたい」と考えるようになる。当時、五十嵐は21歳の大学生だったが、起業という選択肢が見えてきた。

「両親は反対しましたが、目的があって大学に入ったわけではないし、時間の無駄としか思えなかった。結局、反対を押し切り、大学を中退して起業。世間知らずの蛮勇だったとも言えますが、21歳の若造にはリスクより、明るい未来しか考えられなかったですね」(五十嵐)

トップランクの求人・採用情報を掲載しています株式会社トップランク 代表取締役 五十嵐 真一


生まれてはじめて父に頭を下げ、芽生えた経営者としての“自覚”


2000年4月、知人の修理工場の一角を借り、仲間と一緒に建てた小さなガレージからトップランクははじまった。

家賃4万円。工具等は整備工場から貸してもらったため、創業資金は実質0円。高校時代からの仲間と後輩が数名ついてきてくれたが、五十嵐はいつも『お客さまの時間は使うな』と話した。

「できたばかりの小さな会社が信頼を得るには、お客さまの時間を使わず、フットワーク良く動き、誠心誠意、尽くすこと。目の前のお客さまの期待に応えることだけを考えながら、ひたすら働きました」(五十嵐)

高校時代、一緒に日焼けしていた取締役の稲毛田は、後輩の1人。好きなことを仕事にして、信頼できる先輩と苦楽を共にしたいと思い、同社でともに起業することを決意した。

「人を悪く言わず、つねに敬意を持って接する。面倒見がいいから頼られる。そんな五十嵐の人柄が人を引き寄せ、短期間で成長するエンジンになったと思います」(稲毛田)

言葉通り、トップランクはクチコミで評判を呼び、2年目には1000人の顧客を抱えるまでに。その頃には、提供したいサービスとして「トータルカーライフサポート」が明確になっていた。

修理や車検だけでなく、買取販売、保険などをワンストップで提供する存在へ。それには在庫を置ける店舗が必要だったが、手持ち資金では足りず、五十嵐は銀行からの融資を考える。

業績は右肩上がり。簡単に融資を受けられるはずだったが、銀行からの返答は「不可」。理由は、会社の信用度だった。

「保証人がいればと言われ、生まれてはじめて父に頭を下げました。公務員の父が保証人についた途端、すぐ融資が決まり、社会の信用とはそういうものかと考えさせられましたね。

その出来事を通じて、経営者として社員の人生を背負っている。社員が働いてよかったと思える会社にしなくちゃいけないと、自覚が生まれた気がします」(五十嵐)


すべては1人の留学生との出会いから──縁から生まれた海外事業


起業後の10年をひと言で表すと「がむしゃら」になる。顧客が増えると同時に組織の体裁も整えてきたが、2008年、五十嵐そしてトップランクにとってもターニングポイントになる出会いがあった。

ハローワークの紹介でやってきた1人のスリランカ人男性。自動車整備専門学校を卒業したものの、就職が決まっていなかった。面接すると、他にも同じ境遇の友人がいると言うので、結局、五十嵐は3人のスリランカ人を採用する。

「自国と日本の橋渡し的な存在になりたいなら、この会社でクルマのすべてを学びなさいと言いました。クルマは世界中で走っているし、学びは決して無駄にならない、と」(五十嵐)

数年後、1人が結婚することになり、五十嵐は招待を受けてスリランカへ渡る。そこで見たのが街中を走っていた日本車で、古い中古車も多かった。以前から漠然と海外展開を考えていたが、「トップランクがやってきたビジネス、サービスはこの国でも通じる」と、明確な手応えを感じたという。

そして13カ月続けてスリランカに通い、日本で仕入れた中古車を現地で販売する事業を立ち上げた。

「事業拡大のために海外へ出るというより、出会いがあり、スリランカでの挑戦につながりました。出会い、縁をきっかけに、その国に貢献するのが我々の海外事業の基本的な考え方です。

ミャンマーへの輸出も、元留学生のミャンマー人スタッフとともに現地へ何度も赴き、スタートさせました。商売だから儲けを出すのは当然ですが、人の縁、信頼関係があってはじめて、事業としてまわるのだと思います」(五十嵐)

この海外事業、社内ではどう受け止められたのか。「五十嵐は以前から、ただの中古車屋では終わらないと話していました」と、稲毛田は振り返る。確かに、自動車需要が減少傾向にある国内市場だけでは、いずれ頭打ちになるのは明白だ。

「海外進出を考える経営者は多いですが、実現には想像以上のハードルがあります。人との出会いをきっかけにそれらを1つ1つ乗り越え、海外展開を実現させる五十嵐の発想力と行動力には、驚くと同時に、感服したというのが正直なところです」(稲毛田)

整備士の待遇改善を目指した人材事業も人に関わることであり、「トップランクがやるべきこと」として具体的に事業化している。海外と人材。この2つは、同社の未来を切り拓く不可欠な事業だ。

トップランクの求人・採用情報を掲載しています五十嵐(左)と同社取締役 稲毛田 実(右)


キーワードは“Rest Mod”。良質な中古車の宝庫、日本から世界へ


TOPRANK WAYと題された基本理念でも、最初に掲げられるのは「人」である。人を大切にするには、自身が「人としてどうあるべきか」を知らなくてはいけない。その上で、責任感と思いやりを持って接する。そんな人間を生み出す「場」でありたいという思いは、起業時もこれからも変わらないと五十嵐は言う。

「仕事は人のつながりでしか生まれません。責任感と思いやりを持ち、自分から発信できる能動的な人になろうと、つねに伝えています。そうすれば共感する人が集まってくる。

社員同士でも社員とお客さまでも、上下関係はない。志を共有し、一緒に人生を楽しむ者同士、絆のような関係が生まれる。そこから事業が広がっていくのが、理想です」(五十嵐)

理想の実現には、新たなマンパワーも必要になる。欲しい人材を問うと、「生活のために時間を切り売りするのではなく、仕事を通じての出会いを大切にできる人。志とパッションを共有するチームで、1人ではできない大事を成すことによろこびを見出せる人」と五十嵐は答えた。

同社は創業25年目までに「グループ全体で時価総額1000億円」を達成し、次のステージを目指す。その大いなる目標達成のため、理念に共感できる仲間を採用していく予定だ。

トップランクの未来予想図を語る時、極めて重要なキーワードが「Rest Mod」。聞き慣れない言葉だが、Restは「元に戻す」の「レストア」、Modはカスタムと同義の「モディファイ」を指す。

「日本は質の高い中古車の宝庫であり、トップランクはその価値を見抜く目を持っている自負があります。Rest Modで価値を高め、後世に伝えていくのも、我々の重要な役目です」(稲毛田)

稲毛田はその意義を強調する。自動車業界は今、100年に一度の大転換期を迎えており、電動化によってクルマの概念そのものが変わるだろう。変化に対応するため、知識、技術をアップデートしなければいけないが、勝負をかけるのはそこではないと五十嵐は語った。

「電動化が進み、エンジン車の製造は先細りになりますが、その反面、古き良き時代のクルマの価値が高まっていくはずです。そんなクルマを今の時代に合わせてRest Modすることで価値を高め、世界中のクルマ好きに届けていく。『World Car Deal』と呼んでいますが、これを成長戦略の1つの柱に育てたいですね」(五十嵐)

Rest Modしたクルマを通じて人生を楽しもうとする人へ、地球規模で価値を届ける。唯一無二の道が、五十嵐にははっきり見えているようだ。

文・小野塚久男 写真・小田駿一

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【編集後記】

五十嵐氏の人柄を表すエピソードを、メンバーの方が語ってくれた。
「当社には色々な職種のスタッフがいます。
五十嵐さんはそんな社員1人ひとりの出身地や好きなものまで、ちゃんと覚えているんですよ」

五十嵐氏はとにかく人を大切にし、人の役に立ちたいと語る。
そのためには、目の前のできることに全身全霊をかけて取り組むことだという。

経営者として社員や顧客を大切にし、思いやりと責任を持って接すること。
それはある意味当たり前のことだ。しかしその当たり前を、確固たる信念を持ち、粘り強くやり抜ける人物ほど、信頼に足る人物はいない。

やり抜く力をグリット(grit)というが、五十嵐氏はまさにグリットを持ち、一代で同社を国内外で複数の事業・拠点を展開するまでに急成長させた。そんな彼に、一ビジネスパーソンとして尊敬の念を抱かずにはいられない。

「自分で言うのもなんですが、兄貴肌だと思います」
五十嵐氏は笑みを浮かべ、自らをそう称した。
その時思った、彼のもとで働ける社員は幸せだろうなと。

編集・大柏真佑実(Forbes JAPAN CAREER)