“人と人をつなげる”をミッションにかかげ、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミーに注力し社会課題の解決を目指すIT企業、ガイアックス。

「新卒入社卒業者の6割が起業する」というアントレプレナーシップはどこからくるのか。

そこには独特の企業文化があった。

「“人の脳と脳をつなげる”こと。つまり“赤の他人と赤の他人がつながる”ことにより、“赤の他人のことも大切にしながら、相互に助け合える社会”を実現したい」

そう語るのは、ガイアックス代表の上田祐司(うえだ ゆうじ)。

彼は24歳で同社を立ち上げ、25歳で4億円を調達、30歳で上場を果たしている。

起業家輩出の企業として、ガイアックスを連想する人も多いのではないだろうか。

ガイアックス出身者が代表を務める会社で、過去上場した企業は、村井智建が創業したAppBank株式会社、古俣大介が率いるピクスタ株式会社、江戸浩樹が代表を務めるアディッシュ株式会社の3社を超え、e-KYC・本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を手掛ける千葉孝浩や、スマートロック「Akerun」のフォトシンス社長 河瀬航大もガイアックスの卒業生起業家である。

ガイアックスが、なぜ多くの優れた起業家を輩出できるのか。

その答えの一つは、“カーブアウト制度”にある。

“カーブアウト制度”とは、社内の事業部を会社から切り出し、社外の別組織として独立させるという制度だ。

この制度により、事業メンバーに対して全株式の50%までのストックオプションと、外部からの資金調達を含めた資本政策の決定権限が付与される。

このユニークな社風はどこからくるのか、そして一体どのような事業を展開しているのか──

謎に包まれたガイアックスの全貌を紐解いていきたい。


「フリー、フラット、オープン」な環境が、“使命で動く” 働き方を実現させる


──“人と人をつなげる” 

冒頭にあったガイアックスのミッションだが、これを実現するためのフィロソフィーである“使命で動く”が欠かせないという。

ガイアックスが展開する事業は、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミーの領域。

人と人がつながることで、新しいサービスだけではなく、新しい概念や新しい価値観が生まれる。

「このような新しい産業において非常に大切なのが、どのような価値観で仕事を進めていくのかということです。普通に働いていると、会社の方針や上司の方針、あるいは目の前にいるお客様の気持ちに基づいてビジネスをしてしまいがちです。

これから人と人がつながり、新しい社会を作っていくためには、会社の方針に従ったり目の前の仕事に集中しているだけでは、うまくいきません。

『どのような社会であるべきか、どのような社会になれば素晴らしいのか』そういった気持ちで自分自身が動いていくことが大切です。何が正解か分からない中で、どのような世の中であれば素晴らしのかと問い、導きだしていく強い気持ちが、重要になります。

自分はどういった使命で動いているのか、この世に生まれて何を大切にしているのか、人生の中で何を成し遂げたいと思っているのか。この気持ちが、怖さを乗り越えて周りの人を巻き込む力になっていくのです」

“使命で動く”のフィロソフィーを実現するために上田が大切にしているのは「フリー、フラット、オープン」な環境づくりだ。

新型コロナウィルスが流行する前から、ガイアックスではリモートワークが根付いていた。

オランダで働く事業部長、世界を旅しながら働く正社員、その自由な働き方は度々メディアでも取り上げられていた。

経営層の議事録でさえ、全社員にメールで共有される。社員が見る情報と上田が見る情報には乖離がない。

報酬形態も、ガイアックスは一線を画している。

報酬は、独自の目標設定・評価制度である「マイルストーンセッション」によって決定する。これは、四半期に1回のセッションで自分が取り組む仕事内容と成果目標について、ベストケース、ノーマルケース、ワーストケースなど、いろいろなケースで設計をおこない、その成果に紐付く形で報酬を設計するというものである。

四半期終了後には、自分の待遇や報酬について、他者評価で決定されるのではなく、事前に設計した内容と実際の成果を照らし合わせて、自動的に報酬が決まるという仕組み。

これらは、社員自身が望めばあらゆる領域に対し裁量権を持つことが可能であることをうかがわせる。

他社で一般的な「会社が判断をし、会社が示す内容の仕事を社員が実施すること」でさえ、ガイアックスでは異なる。

多くの権限をできる限り各現場が持てるようにと、チームや事業部が最も大切にすることを、チーム単位で判断し、自由に情報へアクセスしながら推進することができる。

ひとりひとりが活躍しやすく、自分自身で判断しやすい環境が、旧来型の組織と異なり、1つの生命体となり、「目的に向かって、組織の全メンバーがそれぞれ自己決定を行う自律的組織」という「ティール組織」の様な形態を成し、「カーブアウト制度」や「副業の自由」などの独自の取り組みにつながっているのだろう。

こうした、徹底して「性善説」に基づいた邪魔しない仕組み作りが、この起業家輩出企業の礎になっていることに気づかされる。

「ガイア理論」が導く、ガイアックスの使命


「イノベーションは、常識やルールを超えたところにあります。私たちは、境界を超えていこうとしない限り、前向きな変化を起こすことはできないのです。“ガイア(地球)” は、私たちが持っているたった一つの住みかです。地球が永らえるため、私たち人類はお互いの違いを乗り越えて、地球が大切に維持されるよう見守る必要があります。

ガイアックスは、他人同士であることを超えて、人と人との境界を超え、お互いを自分のことのように思いやることによって、心からつながり、ひとつとなって全体が幸せになることの実現を目指しています」

ガイアックス(Gaiax)の社名の由来は、ガイア理論の“地球はひとつの生命体である”という考えにあるという。“ガイア”へ“インフィニティ”、すなわち無限大という意味を持つ“X”が語尾につながり、ガイアックス(Gaiax)がうまれた。

ガイアックスは、1999年からIT企業としてプログラミング技術を活かし、ソーシャルメディアの分野でサービスを展開。2017年からは、ミッションを実現するための場としてコミュニティビル「Nagatacho GRiD(本社ビル)」を事業として運営している。

主な事業は、BtoB(法人顧客相手のビジネス)のソーシャルメディアサービス事業と、BtoC(個人顧客相手のビジネス)のインキュベーション事業(新規事業の創出や起業の支援)。

ソーシャルメディアサービス事業は、ワークスタイル関連やブロックチェーン事業を含めると18事業以上。BtoCのインキュベーション事業には、TABICAをはじめとする複数のシェアリングエコノミーをベースとした事業があり、ここに起業家を輩出する目的で設立されたスタートアップスタジオが加わる。グループ内外での投資先は38社以上にものぼるという。

上田は、ガイアックス代表以外にも、シェアリングエコノミー協会の代表理事という側面もあわせ持つ。

ゲストとホスト、プラットフォーマーの三者で成り立つシェアリングエコノミー。普通のビジネスでは、企業がコンシューマーにサービスを提供するが、シェアリングエコノミーでは、コンシューマー同士でサービスを提供しあう。

現在、世界的にシェアリングエコノミーが台頭しはじめている理由は2つあるという。

1つは全てのモノがインターネットにつながる時代になったこと。もうひとつは、ソーシャルメディアが普及し、他人を信用できる世の中になったことだ。


インターネットを軸に、“人と人とがつながり、シェアする”時代へ


あらためて、ガイアックスとはどのような企業なのか。

ガイアックスの事業は、いつも「インターネット」に連動している。

2000年中盤から「ソーシャルメディア」と呼ばれるようになったもの、2010年中盤から「シェアリングエコノミー」と呼ばれるようになったものを推進するための事業を「インターネット」を軸に展開している。そして、その基盤にはインキュベーションの思想があり、さらに根底には、ミッションやフィロソフィーが存在し、新しい概念や新しい価値観につながる事業を形成している。

「“赤の他人と赤の他人をつなげる”ことで、多様な知識や視点や力を合わせ、集合知と言われる優れた価値を生み出す。ガイアックスの事業は、そうした未来を創り出すためにある」

この一言が、ガイアックスを物語っているだろう。

上田は、これからの展望についてこう語る。

「これまで、ソーシャルメディアでは、オンライン上で情報を交換したりコミュニケーションしたりする、いわば情報のやりとりが中心でした。ところがスマホが普及してきたことで、情報だけでなく、実際に人と人が会ったり、助け合ったり、シェアしたりと、リアルに接触することが起きています。

それ自体は『シェアリングエコノミー』と呼ばれていますが、我々からすると、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミーは一体で、人と人とがつながっていく中での、より進化した形なのだと思っています。事業の可能性としても、世界のユニコーン企業を時価総額の大きい順に並べると、おそらくおよそ半数がシェアリングエコノミー関連でしょう。我々も、この領域は急成長する分野だと予測しています。

それと同時に、シェアリングエコノミーが広がることによって、結果的に資本主義社会で発生していた多くの問題が解消されるのではないかとも考えています。

これまでの資本主義社会では、大量生産・環境汚染など、非効率的な動きをうみ出し、人類を幸福から遠ざけるような問題を引き起こしてきました。

シェアリングエコノミーは、個人が個人にダイレクトにサービスを提供するため、相手をダイレクトに感じることができるサービス形態です。

社会に必要なサービスがあった際、資本主義のルールでは、資本を集め、法人を作り、従業員を雇用し、プロモーションを掛けて認知の獲得をおこない、サービス提供と対価を得る。この企業活動が社会へサービスを提供していましたが、困っていることがそこに存在する場合には、本来は近くにいる人々が手を差し伸べてくれるというのが、自然なことなのです。

シェアリングエコノミーでは、誰もが自由に自分らしいサービスを提供する形で、社会に貢献することが可能となります。そして、そこから、より効率的に人類が幸福へ近づく世界へ変容していくと信じています。

ガイアックスは今、シェアリングエコノミーの普及につとめています。積極的な投資や、政策提言なども行いながら、自分らしく働き、自分らしく生きることができる社会の実現に尽力していきます」